石清水社(下)

石清水は、厳冬にも凍らず大旱にも涸れない霊泉として、八幡五水(男山五水)−石清水・筒井・藤井・山ノ井・閼伽井−の中でも特に尊ばれ、往古より皇室及び将軍家の御祈祷に当たってはこの霊水を山上の本宮に献供するのを例としました−その際、神前に供された石清水を「御香水」といいます−。その霊水を湛える泉殿(神水舎)から、右に目を向けると、石垣の上に朱塗の垣が廻り、中央の石段上には格子引戸、その奥に桧皮葺流造の一間社が建っています。周囲の木々の緑に映え、社殿の朱の色が目に鮮やかなのは、平成7年12月に修復工事を終えた、ということにもよるでしょう(泉殿の修復はその翌年の平成8年11月に竣工)。因に、石清水八幡宮の摂社は8、末社は10を数えますが、この御社は摂社の一つです。摂社とは、旧官国弊社において、本社に縁故の深い神を祀る本社配下の小規模神社−本社祭神の后神・御子神を祀る神社、本社の旧跡に祀る神社、本社の荒魂や地主神を祀る神社等−をいい、上下関係で見れば、本社と末社(本社配下にある摂社以外の小社)の中間に位置する。例祭日は10月15日、御祭神は「天地初発」の時、最初に出現した神として『古事記』冒頭に登場する「天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)」です。但し、『古事記』等の古典に記載された特定の神名を各社の御祭神に宛てるようになったのは、おそらく中世以降のことで、大昔には社殿も存在せず、ただ「石清水に坐す神」として崇められていたものでしょう。
石清水社全景