石清水八幡宮

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八幡の昔ばなし「女郎花(おみなえし)」

むかし、むかし、山城という国に石清水八幡宮があり、その男山のふもとに小野頼風という男が住んでおった。
頼風は京で宮仕えをしておったが、何度となく都へ上っているうちに、ある美しい女と親しくなり、
「そなたが恋しゅうてならぬ。」
と、頼風が思いつめるほどに、深い深い恋仲になってしもうた。ところが日がたつにつれて、頼風がとんとたずねて来なくなってしもうたので、女は、
「どうしたのでしょう。もしや病いにでもかかられたのでは。」と、心配ばかりしていたが、とうとう思いが募って、頼風の居る男山を訪ねてみようと思い立った。
ところが、ところが、男山に来てみると、頼風の女房と名乗る女が居て、
「今、頼風は留守でございます。」
と、冷たく京の女を追い返してしもうた。
あまりのことに、気も狂わんばかりに驚いた女は、
「ああ、これは何ということでしょう。あれほど、いとおしがられ、固い約束をしておきながら、もう私のことなどお忘れになってしまわれたのか。そんなお方だったのか。」
と、頼風の心がわりを恨み、あまりの悲しさに打ちひしがれて、もう何もかも終わりだと嘆き、とうとう泪川に身を投げて、はかない最期をとげてしもうた。
それを知った頼風が、
「ああ私は何としたことか。取り返しのつかないことをしてしもうた。許してくれ、許してくれ。」
と、泣き泣き、その女の亡きがらを、手厚く葬ったのじゃ。
女は身を投げた時、着ていた美しい山吹きの重ねの衣を脱ぎ捨てたのじゃが、その衣が朽ちると、やがてその場所に、一輪の女郎花が咲き出てきた。
頼風は、その女郎花をあわれに思うて、いとおしく、懐かしさのあまりに、思わず傍へかけ寄った。
すると、花は恨み顔になびいて退いてしまう。
「はて、おかしな事があるものじゃ。」
と思うて、頼風が後ろへ下がると、花はまた元の場所に戻って咲いておる。
あまりの様子に、心を痛めた頼風は、
「これほどまでに私を怨んで死んでしもうたのか。みんな私が悪いのだ。すまぬことをした。」
と、悔やんで、とうとう頼風も、同じ川に身を投げて死んでしもうたのじゃ。
すると、どうしたことか、その川べりに一本のあしが生えてきて、不思議なことに、そのあしは、大きくなるにつれて、葉がどれも女郎花塚の方ばかり向いており、いかにも
「恋しい、恋しい。」
とでも云うように、たなびいて茂っておる。
それからというもの、このあしは、〝片葉のよし(片葉思いのよし)〟と呼ばれて、ただ一ヶ所だけ、生えておるそうな。
後に、この話をあわれに思った世の人が、女郎花塚を建てたのじゃが、これを女塚と云い、また、頼風塚は男塚とも云われて、今でも、松花堂庭園内に女郎花塚、八幡今田に頼風塚が残っておるそうな。


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